Re;commence 13



久しぶりの更新ですね。
ルルスザやり直しストーリー第13話です。




【Re;turn‐3】





「それで、リハビリと並行して小学校から勉強をやり直しているのか。」
 久しぶりに自室を訪れたスザクの報告に、ルルーシュは面白そうに笑う。
「うん。今、3年生の算数やってる。国語が2年生からやり直してるけど。」
「国語って…日本語だろ?」
 母国語の勉強の方が遅れていることに首を傾げると、スザクは苦笑しながら頭を掻く。
「漢字……ほとんど忘れちゃってて……」
 日本語の文章が読めないのだという。
 日本語はブリタニアと違って多種多様な文字で構成されている。それらを組み合わせて意味を持たせる難解な言語だ。
 日本語を理解するのに、漢字の学習は避けて通れない。漢字はそもそも中華から日本に伝わった文字だが、長い時間を経て意味や形が変遷し、読み方も一文字で2種類や3種類以上あるものもある。その他に接頭語や送り仮名などをつけて、丁寧語や尊敬語など言い回しも多種多様で、子供のころスザクの宿題を見せてもらった時に、よくもこんな面倒な言語を操れるものだと舌を巻いたことを思い出した。
「……そうか。」
「教科書の問題文が読めなくてさ。困っちゃうよ。」
「使わなかったり、学ぶべき時に別の言語を覚えなければならなかったせいだな。」
「その時は、それが必要だたんだからしょうがないよ。少なくとも、4年生の夏までは学校通っていたんだから、やって行けば思い出すし。」
「その頃、まじめに勉強してればな。」
 横合いから入れられた茶々に、スザクはむっとして声の主を睨みつける。
 ゼロの居室には、応接用の3点セットの他に、人一人が楽に寝ころべる長さのソファが1台ある。
 そのソファの主然として寝ころび、出来立てピザのチーズを伸ばしながら食べている少女を、スザクは睨んでいた。
「ちょっと。チーズの臭いで紅茶の香りが台無しなんだけど。
それに、人の話に横から入ってこないでくれないかな。オバサン!」
 スザクが放った最後の一言に、ソファの主であるC.C.は米神をピクリと動かしてピザを頬張るのをやめ、ルルーシュは思わず吹き出した。
「おい。小僧。今私の事を言ったのか。」
 体をゆらりとさせて、C.C.がスザクへ歩み寄る。
「あんた以外に誰がいるんだよ。オバサン。」
「ほう。この絶世の美少女を捕まえて『オバサン』呼ばわりとは……一度視力検査を受けた方がいいのではないか?」
 眉と口元を吊り上げて睨みつけてくる「絶世の美少女」を、スザクは鼻で笑う。
「普通、自分の事を絶世の美少女なんて言う?
まあ。多少は見てくれがいいのは認めてあげるけどさ。
『美少女』はソファに寝転んでピザ食べたりしないよ。行動がオバサンなの。」
 スザクの反撃に、C.C.は顔を真っ赤にさせて口をパクパク動かし、ルルーシュは腹を抱えて爆笑した。
「ルルーシュっ。笑いすぎだっ!」
「ああ。すまんすまん。失敬、失敬。」
 両目の端に涙を溜めながら、お気に入りのチーズ君ぬいぐるみを抱えてむくれる少女を宥める。
「しかし、お前がスザクにいい負かされるとはな。」
 未だ、くすくす笑いながら声をかけるルルーシュを、C.C.が睨みつける。
「でも、僕の言ったことは間違いじゃないと思うけどな。実際のところ、貴女一体何歳?
というか……本当に人間なの?」
 眉を顰めて尋ねてくるスザクに、2人は息を呑む。
 スザクが、C.C.の身体の秘密を知るはずがない。だが、目の前の少年は暗に、彼女が不老不死であること示唆している。
「……それは、どういう意味だ?」
 C.C.が声色を低くして尋ねると、彼は肩をすくめた。
「これでも神社の息子だからさ。
人ならざる者の気配は分かるよ。
でも……貴方は変ってるね。人の気配とそうでない者の両方の気配がする。」
 小首を傾げるスザクに、彼女は薄く笑った。
「そう……人ならざる者か……お前はそう感じるのか。
スザク。お前には、私はどう見える?」
「どう…て。」
 質問に質問で返され、スザクは眉尻を下げる。
「少なくとも、絶世の美少女じゃない。
でも、嫌いな顔じゃない……と思う。
あと……いやなことを聞いたみたいだから、謝っておく。
人の話に口ばし突っ込んできた貴女も悪いんだからね。」 
 釘をさすのを忘れずに頭を下げるスザクに、C.C.はきょとんとする。
「悪かったよ。思いついたまま聞いちゃって……聞かれたくなかったんだろ?そんな顔するくらいさ。」
「私が……?どんな顔を?」
「───自分だけが一人ぼっちで取り残されたような……自分には居る場所がない……そんな顔。」
 苦い顔をして呟くように答えるスザクに対し、C.C.は小さく笑う事で応える。
 それは自嘲だ、とルルーシュには見えた。
「そうか……元はと言えば、私が下らん茶々を入れたのが切っ掛けだからな。
こちらこそ、余計な気をつかわせて済まなかった。」
「そう言えば、貴女の名前をまだ聞いていなかった。」
「C.C.だ。」
「しーつー?なにそれ。自分でつけたの?」
 問いかけに肩をすくめることで応える少女に、スザクは嘆息を漏らす。
「……自分で人間じゃないって認めるなよ。
よろしく。C.C.。」
 手を差し出してくる少年に、C.C.は一瞬目を瞬かせたが苦笑を浮かべて握り返す。
「ああ。」
「ところで、C.C.はルルーシュの彼女なの?」
「はっ?」
 屈託なく尋ねかけられるのに、2人は目を見開く。
「ちっ違うっ。間違っているぞ、スザク!!」
 全力で否定するルルーシュに対して、C.C.は吹き出す。
「共犯者だ。」
「共犯?」
「ああ。こいつがやろうとしている事と私が欲しているもののな。」
 スザクは首を傾げる。
「───ふうん。」
 つまり、味方なんだよね。と納得して笑顔を見せる彼に、2人は顔を見合わせ微笑した。

ふわぁっ。とスザクが大きなあくびをする。
「ごめん。眠くなってきちゃった。部屋に戻るね。」
 目をこすりながら謝るスザクに、ルルーシュは眉を顰める。
「リハビリに勉強まで加わって疲れたいるんじゃないのか?」
「大丈夫だよ。消灯時間は守ってるから。
それに、体力だけは自信あるし。」
 右腕を曲げ力こぶを見せると、自分の座るソファに立てかけてある松葉づえに手をかけ器用にに立ち上がる彼に、ルルーシュは目じりを下げる。
 熱心なリハビリの甲斐あって、松葉杖を使いながらではあるが、自力で移動できるようにまで回復してきた。
 そんな親友の姿に、ルルーシュは安堵の笑みを漏らすのだった。



 病室に戻ったスザクは、勉強のために用意してもらった小さなテーブルの上を睨みつけ、小さく息を吐く。
 テーブルの上のノートをパラパラとめくり、ある1ページを開くとそれを引き破いた。
 そこにはブリタニア語で殴り書きがされている。 
“Why are you here!”
 何故、ここにいる!
 今朝、目が覚めたら閉じておいたはずのノートが開かれ、これが書かれていた。
 達筆な文字で書かれいるこれは自分のものではない。明らかに大人の文字だ。自分が眠っている間に入り込んだ誰かが書き残していったのだとスザクは考えている。
 自分が歓迎されてないことは承知の上で、入団を希望した。
 だが、こんなやり方で嫌がらせを受けるとは予想していなかっただけに,堪える。
 ルルーシュに相談しようかと彼の居室を訪ねたが、結局言えなかった。その八つ当たりで、彼の共犯者には嫌な思いをさせてしまった。
 ゼロは…ルルーシュは自分の仲間を信じているはずだ。副指令の扇さんも親切だ。
 そんな彼らに、こんな事は伝えたくはない。
 手の中の紙をくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱に投げ入れる。
「言いたいことがあるなら、直接言えよ!
大人げない真似しやがってっ!」
 ドサッとベッドに倒れ込む。
 スザクは、目を閉じて胸の中に沸いた苛立ちを鎮めるために呼吸を整えた。
 しっかりしろっ。枢木スザク。収容所で受けてきたことに比べれば、こんな嫌がらせ、まだ可愛いものじゃないか。
 そうだ……人の親切に触れて、甘やかされることに慣れようとしてる……僕には、そんな資格はないのに。
 仰向けになり、自分の掌を見る。
「これは、『人殺しの手』なんだ。
僕は、罰を受けなきゃいけない人間なんだ。」
 言い聞かせるように呟く。子供だから大人と同じように裁かれないというなら、罪を償う方法を探さなければならない。
「僕は……誰かのために…誰かの役に立つことをしなきゃいけない……」
 開かれている手を握る。それをじっと見つめて、確認するように呟く
 「僕は、ここの人たちの役に立つんだって決めたんだ。」
 だから……僕を邪魔に思っている人がいたっていいんだ。
 感謝を期待してはいけない、褒められたいと欲をかいてはいけない……喜んでもらわなくてもいい。
 これは……僕に与えられた罰なんだ。
 スザクは、毛布を頭からかぶると目を閉じた。
 睡魔はすぐに襲ってきた。その魔物に身を委ね、スザクは深い眠りに落ちていくのだった。



 翌朝。
 目覚めたスザクは、昨日と同じように開かれたノートをテーブルの上に見つけた。
「また……」
 顔をくしゃりと歪める。
 破り捨てようと手をかけ、書かれた文字に目を見開く。
“Return to the army”
 軍に戻れ。
“Report it!”
 報告するんだ!
「何だ……これ……」
 軍に報告しろ……という事は、ブリタニア軍の事か?
「はは……っ。」
 目頭が熱くなる。違った…黒の騎士団の人間じゃなかった……!
 ここに所属している人間が、スザクへ軍に戻ってここの事を報告しろというはずがない。
「良かった……っ!」
 水滴がぽたぽたと紙に落ちて染みを作っていく。
 歓迎されていないまでも、邪魔に思われてもいなかった……昨夜のような苦しい思いを抱えたままここに居なければならないかと思うと、正直辛かった。
 だが、これで……!
 スザクは、ここに居ることを初めて許されたような心地がした。これは安堵の涙だ。
「おはよう‼スザク君。」
 看護師の深瀬が、いつものように元気よく明るい声でドアを開け、笑顔を向けてくる。
「おはよう!」
 スザクは、涙を拭い笑顔で振り向いた。
「あらっ。今日は朝からご機嫌ね。」
「うん。今日も歩行訓練頑張るからね。
早く、松葉杖無しで歩けるようになるんだ。」
「よーし。やる気十分ね。今日も頑張りましょう!」
「おうっ!」
 2人は、ハイタッチをして笑い合う。
「あ。そうだ深瀬さん。
ちょっと聞きたいんだけど。ここに、保護されているブリタニアの人っている?」
「ここって…医療エリアのこと?
いいえ、いないわよ。と、言うか、ブリタニア人は負傷者も捕虜もこっちへ来るときにトウキョウ租界に置いてきたから……」
「え……」
 スザクの目が見る間に見開かれていく。
 深瀬は小首を傾げた。
「あの……じゃあ、僕みたいにブリタニアから黒の騎士団に入った人間は?」
「名誉だったのをやめて、ここに入団した人は何人かいるけど…ブリタニア人が入団したのは、幹部のディートハルトくらいじゃないかしら。」
「その人、今どこにいるの?」
「神楽耶さまと一緒に中華に逃れてるわ。」
 深瀬の話に、スザクの目は驚きでさらに開かれる。
「神楽耶って……ひょっとして、キョウト六家の⁉」
「そうよ。皇神楽耶さま。皇コンツェルンは黒の騎士団最大のスポンサーよ。」
 私たち、皇グループが経営する病院からこっちに移籍してきたの。と笑う彼女を、唖然として見る。
「そ……そうなんだ。」
「スザク君。ひょっとして神楽耶さまの知り合い?」
「………いとこなんだ。」
 その告白に、今度は深瀬が驚きの声を上げる。


 どういう事だ……?
 スザクは、困惑の表情でノートを見つめる。
 ここには、ブリタニア人の捕虜も負傷者も保護されていないという。唯一のブリタニア人も遠く中華にいる。
 じゃあ。一体これは……これは誰が書いたものなのだ?
 スザクは背筋に冷たいものを感じるのだった。




 


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