誓約



ルル誕SS
「じれったい」の続編です。
本当は文中に出てきたシンジュクゲットーの事件からにしようと思ったのですが、今日という日に間に合いそうもないので、肝心の部分だけにしました。

ゲットーの話は、またの機会という事で……すみません。







誓約



 真っ白な騎士服。真新しい上着の袖に腕を通す。
 体の線に沿った形に仕上げられたそれをきっちりと着こなし、スザクは鏡の前で背筋を伸ばす。
 やっと、やっとこの日を迎えることができた。
 ブリタニアから人質として生家に預けられたブリタニアの皇子、ルルーシュの騎士になることを望み、彼もまた「いつか騎士にしてやる。」と約束した。その約束が果たされるまで実に7年かかった。
 7年越しの夢がようやく叶う。
 鏡の中の自分の顔は、喜びに満ち溢れている。
 自分の背中の位置にある扉。その向こうにこれから主となる少年が待っていてくれる。
 大きく深呼吸をすると、スザクは扉の前に立つのだった。

 ルルーシュ、ナナリーと共にアッシュフォード家に引き取られたスザクは幼少期を彼らと過ごしたのちアッシュフォードの使用人としてブリタニア国籍を取得し、神楽耶の協力の元、キョウト六家枢木家の当主の座を得、エリア11内のレジスタンスを取り纏めてきた。
 それもこれも、すべてルルーシュの騎士としての役目を果たすためだ。
 先日起きたシンジュクゲットーでの騒乱にルルーシュが巻き込まれたことがきっかけとなり、ついにルルーシュは本国に叛旗を翻す覚悟を決め、スザクを騎士に叙任することにした。

「お兄様。これが騎士叙任の誓約文です。」
 ニッコリと微笑むナナリーが差し出す紙を受け取り、そこに書かれた文言にルルーシュは息を呑む。
 目を見開いて自分を見る兄に、ナナリーは笑みを深くした。
「おふたりに相応しい誓約をと、私が考えたのです。
お気に召しませんか?」
 眉尻を下げて小首を傾げる彼女に、ルルーシュは目を細める。
「いや……とても良い内容だ。
ありがとう。ナナリー。」
 兄妹は、笑顔を向け合った。
 先日のゲットー殲滅戦に巻き込まれたルルーシュを、スザクは身を挺して守り、彼に戦うための牙を送り届けてきた。
 すべてはルルーシュのために……スザクのその思いの強さに、ルルーシュは応えた。そして、長年叶えてやれなかった約束を今日成就させる。
 扉を開けて入ってくる騎士を、ルルーシュは満面の笑みで迎えた。

「枢木スザク。汝、ここに騎士の誓約を立て我が騎士として戦うことを誓うか。」
 自分の前に跪く少年に問う。
「イエス ユア ハイネス。」
 迷いのない響きで、答えが返る。
「汝、我欲を捨て、大いなる正義のため。剣となり盾となることを望むか。」
「イエス ユア ハイネス。」
「今日より、いついかなる時も我と共にあることを誓うか。」
「イエス ユア ハイネス。」
 ルルーシュは、小さく喉を鳴らした。
「幸福なるときも、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死が2人を分かつまで……」
 スザクの肩がピクリと動いた。
「愛し、敬い、貞節を守ることを誓うか。」
「イエス ユア ハイネス。」
 スザクは、そう答えると腰の剣を抜き、切っ先を自分に向けてルルーシュに差し出す。
 俯いた状態のスザクの表情は、ルルーシュからは見えない。差し出された剣の柄を微かに震える指で掴んだ。
 が、すぐにそれはカランと音を立てて床に落とされた。
 それに驚いたスザクは、思わず顔を上げてしまった。すると、ルルーシュの腕が首に回され彼の顔が間近に迫ってくる。
 彼と同じように膝をついたルルーシュに、抱擁されていたのだ。
「私、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは汝、枢木スザクを騎士と認め……口づけを以って誓約の成立とする。」
 驚きに見開かれた翡翠に映り込む自分の姿を、ルルーシュは見た。
「───イエス ユア ハイネス……」
 自分を映す瞳がゆっくりと閉じられる。それに合わせて瞼を閉じれば、柔らかで温かい感触が唇に触れた。


  
 辺りを静寂が包む。
 この叙任式に立ち会っているナナリーは、声が聞こえなくなったことに首を傾げる。
「咲世子さん。おふたりははどうなさっているのですか。」
 その問いかけに、傍らに立つ咲世子はウフフと笑みをこぼした。
「顔と顔をくっつけたまま、離れる様子がございません。」
「あら。まあ。」
 ナナリーも、笑みをこぼした。
 よくよく耳をすませば、息継ぎの時に漏れる小さな声や、微かな水音が聞こえる。
 「ふぁ……っ。」
 スザクの喘ぎ…もとい…声が聞こえ衣擦れの音がナナリーの耳に届く。
 どうやら2人とも立ち上がったようだ。察するに、きちんと立ち上がっているのはきっと兄の方だ。騎士となった彼は、青息吐息で兄に凭れ掛かっていることだろう。
「わっ……」
 スザクが声を漏らした。
「ナナリー。」
「はい。」
 兄の声に機嫌よく答える。
「この場合。どちらが新郎で新婦になるのだ?」
 真面目な声で尋ねてくる兄に、ナナリーはクスリと笑った。
「それは、もちろん…花嫁はスザクさんですわ。
花嫁修業は、完璧でいらっしゃいますもの。ねえ。スザクさん。」
 ニッコリと微笑む主の妹に、スザクは目を見開いて彼女を見、次いで、腰砕けになった自分を抱きかかえて満足そうに笑う、アメジストの瞳に微笑し嘆息を漏らすと、その胸に自分の頬を寄せた。
「イエス ユア ハイネス。」
 その答えに、ルルーシュはますます笑みを深くすると、スザクを抱きかかえたまま部屋を出ていった。
 2人を見送って、ナナリーはコロコロと笑う。

 本当に手間のかかる主従ですこと。



 

 



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